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「由貴……」
耳元で名前を囁けば、由貴の肩がびくりと上がり、手に持っていたスイカが落ちていく。
「だ、大地っ」
自由になった、でもスイカの汁でベトベトのその手を掴み、さっき舐めた頬と同じようにそこも、舌先で刺激する。由貴の頬はそれまでと比べものにならないくらいに赤く染まり、それから「……んっ」と小さく声を漏らした。
「大地、だめっ」
「やだ。やめたくない」
「大地っ、」
少し黙ってと、今度は口を塞いだ。軽くしか触れたことのなかった由貴の唇を今回は激しく奪う。境目を舐め、それから舌をねじ込めば、今まで聞いたこともないくらいの甘い声を由貴が漏らした。
「ふぅ、んっ、」
さっきまでスイカを食べていたから、由貴の口の中はとても甘い。キス、気持ちいい。
けれど、うまく呼吸ができていない由貴が苦しそうにしているから、俺は仕方なく唇を離した。
ふはーっと、由貴が大きく空気を吸い込む。しばらくそうやって深呼吸を繰り返していたけど、落ち着いたのか俺の目をじっと見つめ、それから思いっきり俺の頭を叩いてきた。
「いってぇ、」
「大地のばかっ」
「……え?」
無理矢理キスしたから怒ってる、そう思ったけれど由貴の顔は怒っているようには全然見えなくて。じゃあどうして俺のこと叩いたのかと不思議に思い由貴の顔を覗き込めば、由貴はまた俺の頭を叩き、目線を逸らしてしまった。
「由貴、」
もしかして、照れてるだけ?嫌ではなかったってこと?俺、どうしたら良い?
そんなことをぐるぐる考えていると、由貴はまだ皿に乗っているスイカに手を伸ばした。ゆっくりと、一口ずつ口にしていく。
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