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黒い扉が開かれる。
冷たい風が扉から流れる。
「みなさん、今回の話手はあの方のようですね」
黒い服を着た男の人が椅子を座りながらこちらを見て話す。
「まっちゃんと読者の皆様、いらっしゃいませ。私は姫川幸久と申し上げます。
そう、それはこの部屋のように寒い風の吹いた冬の日でした。
私はマンションに住んでました。私の家族は娘と妻がいました。
その日も私はその家族に会うために会社から家に帰ったんです。
エレベーターに乗り、階段に上がり私は五階の家の扉に行ったんです。
その時、上にある電気が急に消えたんですよ、不気味ですよね。でも、すぐに付きましたよ。
私はインターフォンを鳴らしてドアを開けてもらいました。たまたま鍵がなかったからですね。
「おかえり」と妻は言うのです。
「ただいま」と私は彼女に言ったんです。
「パパー、おかえりー」と私の娘は走ってきたんですよ。かわいいですよ、まだ幼稚園児でしたからね。
「ただいま」と私は彼女の頭を撫でて言いました。
その時、思ったんです。
彼女の頭がいつもより冷えていることにね。
気のせいだな、と思いましたよ。
私は疲れているから酒を飲んで寝たんですよ。
妻は喜んで酒を注いでくれましてね。
あんなに優しくされたのはいつだろうかなと思ったんですけどね。
その時はもう、娘は寝てましたよ。彼女が寝かせてくれました。子供ですからね。
私が疲れてその場で寝ようとした時でした。
あなたは私の願いことが叶うなら?……
その歌が聴こえてきたんです。『翼をください』です。
でも、私は酔ってたため、大声で言ったんです。
「うるせーんだよ!!」
あなたーを殺してもーいい
彼女は聞いてないのだろうかと思いました。でもよく聴くと歌詞も違います。さらに先程から何やら物音が聞こえるなぁと思ったらその歌と共に分かったんです。まな板に包丁を叩き込んでる音って。
私は体を起こし声をかけたんです。
「おーい、何してんだ?」
その血をー鍋に入れて 食べてみたいなー
彼女は歌いつつ血を流しながら台所に出てきたんです。
「ねぇ、あなた死んでくれる?」
目も白目でした。私は忍び寄ってくる彼女を振り切ってまで玄関を逃げました。
酒のせいで目元がクラクラでした。
でも、そんなこと言ってられません。
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