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マスターはお客さんが使ったカップをきれいに洗い、棚に戻しまった。店の中はしんとして空気はひんやりしてる。マスターはショパンのレコードをかけた。静かにショパンのピアノ曲が流れる。
その曲にあわせたかのように密やかにお店の扉が開く。入ってきたのは二人の女の子。おそろいのドレスを着て、おそろいの麦わら帽子をかぶって、おそろいのおかっぱ頭で、おそろいの不機嫌な顔で立ってた。
「いらっしゃいませ、双子さん」
女の子たちは、むうっと唇を突きだしてぷいっとそれぞれ別の方を向いた。
「たしかに私たちは双子よ」
「でも双子っていう名前じゃないの」
「私はえみり」
「私はりえみ」
マスターは二人のためにカウンターに二枚のコースターを置いた。
「たいへん失礼しました、えみりさん、りえみさん。どうぞ座ってください」
えみりとりえみは顔を見合わせて笑顔になると、二人並んでカウンターに座った。そうしてぴったりそろった声で注文した。
「コーヒーソーダをください」
マスターは優しく笑いコーヒーソーダを準備する。コーヒーを濃い目にグラス半分くらいまで淹れ、いっぱいの氷とソーダを注ぐ。えみりとりえみは麦わら帽子を脱いできょろきょろと店内を見渡した。その頭の動きのリズムがショパンの曲とあっていてマスターは優しく微笑む。
「どうぞ、めしあがれ」
コーヒーソーダにミントをかざると、シロップと一緒にコースターに乗せた。えみりとりえみは目を輝かせてグラスにストローを挿す。
「甘いの大好き。シロップたくさん入れよう」
えみりが言った。
「私、もう大人だからシロップは入れないわ」
りえみが言った。二人は顔を見合わせて、それからツンとそっぽを向く。えみりはシロップをたっぷり入れたコーヒーソーダを美味しそうに、りえみは苦いコーヒーソーダを顔をしかめながら飲んだ。
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