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 「今日は、空が高い」誰が言ったのか。当たり前 の事なのに何故か心に引っかかって。思い出すのは その時の空。憂いを帯びた紫の海に薄赤い雲をたな びかせたいつもと同じようなでも、何かが違うよう に見える空。きっとそう言った誰かと見たから。振 り向いて笑った顔が、逆光が眩しくて真っ黒に塗り 潰されている。それでも日差しに何かがきらりと光 ったのを微かに思い出す。あれは、いつ?とても近 いようなとても遠いような。慕わしかった気持ちだ けが先走る。空を一緒に見たはずの誰かは?誰か は・・・誰だった?
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