2人が本棚に入れています
本棚に追加
ぬかるんだ足元を小さな影が素早く走り抜ける。
それを追う声。
「行ったろ!ホップ!そっち回れ」
「よっしゃ!」
答えた声が自分の前に現れた瞬間、小さな影
がチチッと声を上げて方向転換をする。しかし
その先には無情にも電気を帯びた網が待ち構え
ていた。パチッと音がして、網の中にネズミに
似た体調50センチほどの獣が掛かっている。
しかしそれには本来一本のはずの尻尾が体に
合わない太さで5本もあり、前の歯がまる
で錐のように尖った異形だった。でもここで
は貴重なたんぱく質だ。前方から先に声を
かけた男が網に近づく。男の外見は髪から
肌の色、瞳の虹彩までが真白だった。
荒れ果てた地上でそれは禍々しくも、美し
くも見える。そして右から近づいてくる影
は不自然に飛び跳ねているようだ。下肢が
異様に太く、短いうえに膝が曲がり足首か
ら先は外側に向いてまるでカエルのようだ
った。どうやら足を交互に出して普通に歩
くことが出来ないようで、飛び跳ねるよう
にして移動して来る。ホップと呼ばれたの
はこの男のようだった。
「やりぃ、ファー!今日はラットの肉が
食えるぜ。」
ファーと呼ばれた白い男も嬉しげに頷いた。
ぐったりしたラットを片手に元来た道へ引き
返そうとしたその時、ひどく大きな影が前を
塞いだ。はっとして2人は立ち止まる。
「いいもん持ってるな、寄越せよ。死にたく
なかったらな。」
最初のコメントを投稿しよう!