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小学六年生だったわたしは、しかし、中学校のテニスコートに居た。
わたしが通う予定のその中学は、入学前から部活に仮入部出来たのだ。
テニスコートと言っても、黄色くて硬いボールの、よく見るテニスではなく、ぷよぷよと軟らかいボールのソフトテニスである。
その、女子ソフトテニス部で、私は彼女に出会った。
美優は、他校の子だった。
自転車で三十分ほど離れているから、小学生のわたしには、ずいぶん遠い場所だ。仮にB小とする。
わたしが通うA小に、女子ソフトテニス部の顧問が理科の授業をしに来ていたのだが、わたしはその先生が好きで、この人が教えるのならと仮入部したのだ。
A小からはわたしの他にもう一人B美も仮入部していた。
そしてB小からは美優の他にD香と言う、小柄な子がいた。
始めは、この四人だけだった。
だからか、入学後いきなり増えて三倍になった部員の中でも、わたし達四人の絆は強かった様に思う。
ところが入学からわずか二ヶ月後、美優が入院した。
どうやら美優は、幼い頃から入退院を繰り返し、殆ど学校に来られていなかったらしい。
それから何と、二年の夏になるまで、美優は一度も退院出来なかった。
何度か部のみんなで見舞いに行き(美優の入院先は車でないと行けなかったので、誰かの父兄に送ってもらうしかなかった)、仮退院の時にD香と三人で遊んだりはしていた。
元気そうだった。
二年の修学旅行には間に合ったけれど、手術で気管に管を入れたとかで、運動は全く出来なくなってしまった。
部活は、辞めるしかなかった。
部活仲間と言う絆が無くなっても、同じ組だったわたしと、B小出身のD香は、変わらず美優と仲が良かった。
修学旅行は当然一緒に回ったし、休みの日もよく遊んだ。
三年になっても、美優とわたしは同じ組で、休み時間や移動教室は常に一緒だった。
たくさん話をした。
その中で、何の流れか忘れたけれど、不幸自慢をした。
二人がどんな不幸自慢をしたのかは忘れてしまったけれど、自分が何を言ったのかは、はっきりと憶えている。
実はわたし、二、三歳の頃に吐血して入院した事があるのだ。
何の後遺症もなく完治してしまったので未だにどんな病気だったのか知らないのだけれど、何でも肺に水が溜まっていたとか。
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