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――桜の木の枝先が赤く膨らむ頃、僕は『僕』でいるのを止めた。
「キ、キラ。何だよ、その髪型……」
「似合う?」
「似合うも何も……」
親友でもある門真は息を呑んだ。それもそのはず……。
去年、この高校に入学した頃から……イヤ。正確には小学二年生の頃から僕の髪は酷かった。不揃いに伸びた髪は肩にかかり、ボサボサでいつもあちこち跳ねて「汚らしい」とよく言われていた。
流石にそれ以上伸びれば切るが、切ると言っても店に行き切る……訳ではない。
家でも学校でも切りたい時は、近くにあるハサミでバッサリやる。長さが不揃いでも気にも止めない。……止める気にもならなかった。
だからいつもクラスでは浮いていたし、嫌われてもいた。だから、親友と呼べるのは物好きで変わり者で幼なじみの門真しかいない。
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