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――卒業式。僕は門真を探した。普段、当たり前のように一緒に帰る門真がいない。
「……私、門真君が好きなの」
門真を探して門真を見つけた。卒業生はとうに帰った時間帯。卒業生が一人、二人……三人いた。三人のうちの真ん中の一番小さな可愛らしい女の人だった。制服の胸に着けた赤い花のリボンを外して、門真に差し出している。
昔から、この高校では卒業式に卒業生は胸に着けたリボンを好きな人に手渡す。想いの通じた卒業生同士は互いにリボンを交換するのだが、相手が在校生の場合は学年証を卒業生に手渡すんだ。
――あんな門真、初めて見た。
顔を真っ赤にして嬉しそうに門真は微笑む。
僕は耐えられずにその場をさった。
それから、今日まで門真をどこか無視し続けて春休みは会わずにやり過ごし……。
僕は『僕』でいるのを止めるって決めたんだ。
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