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彼は利口で美麗な賢人よ。
しかし彼自身は決してそうは認めないでしょうね。
運動も勉学も出来ない。おまけに容貌も酷い。何をやってもダメな呼吸することだけが取り柄の劣悪人間――と、彼自身は思い込んでいるに違いないわ。
そんなことはない。彼は間違いなく天才よ。私が見る限り運動のセンスも悪くないし、その容姿の美しさは学校一かもしれない。
最初、私がそんな彼を見付けたのは高校一年の秋のことだったわ。
彼は図書室で勉強をしていたわ。それだけなら普通なのだけれど、彼は一切休むことなくひたすら問題を解き続けていたわ。集中力を切らさず、あそこまで一つのことに取り組み続ける人間を私は初めて見た気がしたわ。次の日も、その次の日も彼は飽きもせず図書室で分厚い参考書を手元に置いて勉強していたわ。
私は少しだけ彼に興味を持った。だから少しだけ彼について調べたの。
結果、大変驚いたわ。
極めて高い集中力であれだけ長時間勉強している筈なのに、成績が宜しくないなんて……仮にやり方が宜しくなかったとして、果たしてここまで成果として結びつかないものかしら?
僅かばかりだった興味は私の中で大きく広がっていったわ。
「私と、付き合ってくれないかしら」
彼に告白したのは、好きとか愛しているとか恋しているとかが理由でではなかったの。単純に興味があったから。もっと彼について知りたかった。彼という存在が、もしかしたら私にとっての……この話は後にしましょう。
それで分かったことがあるの。
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