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俺は馬鹿で醜悪な愚者だ。
まず運動が出来ない。走るのは遅く、まだ亀の方が速いかもしれない。筋力もない。飛んで来るボールというもの自体が怖く、球技の参加もままならない。
勉学に関しても悲惨だ。学業にしっかり励んでいるはずなのに成績はいつも中の下。これが全く勉強に勤しんでいないならばいざ知らず、俺はやっているんだ。結果がついてこない。こんな悲しいことはない。
おまけに容貌も酷い。このガリガリの身体。癖が酷く纏まることをしらない黒髪。青白い肌。寝不足から来る目の下のクマ。おぞましい程の醜悪さだ。
俺は何をやってもダメなのだ。良いところなどどこにもない。馬鹿な醜悪な愚者だから、それも仕方ないのだろう。
そんな塵のような存在ではあるけれど、俺には彼女がいる。自分には不釣り合いな程の美人だ。学校一の秀才と言われている。また運動も出来る。
俺と対称の人間。
「私と、付き合ってくれないかしら」
彼女からの告白。それは高校二年……つまり去年の夏のこと。
「え、あ……でも、俺、ほらゴミ屑だから。君にはもっと、良い人が……」
戸惑う俺に、彼女はただ笑う。
「そんなことないわ。貴方だからいいの」
訳が分からなかった。
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