馬鹿で醜悪な愚者

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言葉に詰まった。 俺はこれからどうするつもりなのだろうか。一芸に秀でているわけでも、万能に物事をこなす能力もない。凡人以下の人間だ。このまま行けば就職するか、もしくは三流の大が……いや、それは親が認めないだろう。 俺のことを両親はよく罵る。よく叩く。よく無視する。自分の息子が馬鹿で醜悪な愚者であることが許せないのだろう。多分、俺が両親の立場だとしても同じようなことをする。それぐらい自分は害なのだ。両親が異常なわけではない。 高校受験の時ですら、私立への進学が許されなかったのだ。私立の無名な大学となれば尚更だ。俺には価値がないのだから、その対応は当然といえよう。 「ね、私と一緒の大学に行こうよ」 「それは」 出来たらそうしたい。同じ大学。それも国立で学費も安く済む。その上、レベルも高い。文句の付け所はなく、それならば両親も許してくれるだろう。 だが、俺には学力がないのだ。 「ね、いい案だと思わない?」 彼女はグッと俺へと身を寄せる。顔の距離は自然と縮まり、視線は交差した。後悔。目を合わせなければ良かった。その瞳が「私の言う通りにしろ」と告げている。 「あー……わかった。俺も、そこ、目指す」 そんな彼女を、果たして俺如きが裏切っていいのだろうか? 答えは否だ。それにもし「無理だ」と足蹴にしたならば、きっと憐れみを孕んだ侮蔑の表情をもって彼女は俺を見下すだろう。 それは許されない。 自分を信頼してくれる唯一の人間を失うわけにはいかない。彼女と出会う以前の生活に……考えただけでゾッとする。 俺は石ころだ。存在しようがしまいがどうだっていい。そんな誰の目にも止まらない矮小な存在。
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