0人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもより全然早めの放課後。
時間は12時だけど、今日は入学式だからもう学校は終わり。
私はガヤガヤと五月蠅い教室の中で一人席に着き、レンを待っていた。
朝言っていたのだけど帰りのホームルームが終わったら迎えに来てくれるらしい。
(もうそろそろかな)
と教室の外に視線を移す。
すると教室をきょろきょろと見回す一人の男子生徒の姿が見えた。
その穏やかそうな双眸が私をとらえると目を細めて手を振る。
レンだ。
私は鞄を手に取ると彼に駆け寄った。
「奏………遅れてごめんね。一緒に帰ろ?」
昔とは違う低い声で言われる。
「うん。」
そっと手を差し出されて私はそれを躊躇いつつ握った。
彼レンこと藤連勝(ふじれんしょう)は言っての通り幼馴染だ。少しだけ茶色くなった髪やいつの間にか私を越してしまった背丈や声以外は昔と変わらず、笑顔が私を落ち着かせる。
何よりも大切な人。
最初のコメントを投稿しよう!