呪いから解放された王子と王子を探す姫の冒険

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駅に着くと、バスを降りてコインロッカーのある場所へ向かう。 N12番のロッカーを探して鍵を差し込むとカチリと開いた。 中には飲みかけのペットボトルと鍵が入っている。 「いらないっつーの」 確かにバッグに入れてたけど、誰かの手に渡ったこんな怪しいもの飲むわけがない。 ペットボトルは捨てて鍵を取り出す。 いつもの紙はないようだ。 鍵には『S05』のタグが付いている。 しかしここにはNの30番までしかない。 「あ」思い出した。 ここは北口。南口にもロッカーがあった。 大きなため息をついて南口に向かい、S05番のロッカーを探す。 「あった」 鍵を差し込みロッカーを開ける。 中にはハンカチと鍵。 「こんなに歩かせてコレ?」 不満を漏らしながらハンカチを取ると、間に折られた紙が挟まっている事に気付いた。 『姫は迷いの森に入り込んでしまった』 「迷いの森?」 首を傾げながら鍵の番号を見ると 『N04』 また北口だ。 戻ってN04のロッカーを開けるとポケットティッシュと鍵。 これも確かにバッグに入れてたけど、こんなのが欲しくて苦労してるんじゃない。 次の鍵の番号は『S21』 南口だ。 鍵を投げ捨ててしまいたい衝動に駆られた。 でもダメ……。 スマホだけは絶対に取り戻さないと、どんな事に使われるか分からない。 それからは日が傾くまで何度も北口と南口を往復し、1つ1つバッグの中身を取り戻していった。 『N01』のロッカーを開けた時、ポーチが1つだけ入っているのを見付ける。 「鍵は……ない?」 取り出して中を確認すると、鍵ではなく折りたたまれた紙が入っていた。 『姫は迷いの森を抜けた。この先のお城に王子様がいる』 「やっとかよ」 疲労と達成感、怒りと喜びとないまぜで、いったいどんな顔をすれば良いのか。 その下の地図を見た時、怒りの比率が格段に大きくなった。 「またあの路地裏じゃん。どんだけ意地悪なのよ」 バッグにポーチを突っ込み、再びあの古いビルのある路地裏へ向かった。 バッグの中身はすべてコインロッカーで取り戻した。 あとはスマホだけ。次の場所に行けばもう終われる。
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