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話が終わってここを出ようと腰を上げた時、ふと朝気になったことを思い出した。
先程の優しい笑みは朝日奈の安全が少しでも確保されるという喜びからだろうか。
なら如月はやはり朝日奈のことが好きなのだろうか。
頭の中で考えても仕方がないという結論に至った俺は、ちょうどいいとそれを尋ねてみる。
「先生は朝日奈が好きなんですか?」
「は?」
ものすごく怪訝な顔を返された。
まるで空飛ぶペンギンを見たような、未知の生物を目の当たりにしたそんな顔だ。
失礼なやつだな。
「なんで俺が朝日奈を好きだと思ったんだ」
「さっき最後に今まで見たこともないような優しい顔をしていたので」
お前は何を言っているんだとでもいうように、如月は頭を抱えている。
「あれはお前が…」
「俺?」
「……いや、いい」
如月が何か言いたげだったので先を促すが、彼は結局何も言うことなく俺を追い出すように手を振った。
話したくないなら仕方がない。
俺はドアへと歩き出した。
「また今度」
ドアを閉める直前にそんな言葉が聞こえた気がしたが、昼休みが終わりそうだったので俺は急いで食堂に向かった。
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