四章

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「東雲と佐伯が良い例だ。あいつらの手綱を握れるやつなんてお前だけだろ」 「ですが俺だって一応親衛隊持ちです」 「お前ならその辺のことも上手くやるだろ」 如月はただの生徒に何を求めているんだ。 「ま、無理にとは言わねぇよ。できる範囲で構わない」 そんな風に言うのはずるいと思う。 そこまで言われてやっぱり無理です、なんて薄情な答えを返せるわけがない。 どうせ度が過ぎるようなら注意するつもりだった。 それが少し前倒しになったと思えばいい。 俺はため息を一つ吐くと、中身が無くなったカップを置いて頷いた。 「わかりました。やれる範囲でやってみます」 如月はその言葉に優しい笑みを浮かべてみせた。 彼のこんな貴重な表情を拝めたのは嬉しいことだが、願わくば違う人に見せていただきたかった。 例えばチワワとか。 俺はそれを陰からそっと眺めていたい。
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