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再び静かになった第二社会科講義室で如月は一人、顔を手で覆って考えを巡らせる。
もちろん、考えるのは先程この部屋を立ち去った生徒だ。
別に容姿に惹かれたわけじゃない。
確かに彼の顔は整っているが、この学校には顔のいいやつなんてそれなりにいる。
そんなやつらにいちいち心惹かれているわけではない。
それよりも困ったやつには結局手を差し伸べるお人好しなところだとか、周りを良く見ている世話好きなところだとか、気付けば如月は彼のことが気になっていた。
時々、無意識のうちに目で追っていた。
多分ーー好きなんだろう、天宮のことが。
今まで人を好きになったことが一度もないので、この感情が本物なのかどうかはわからない。
だが一方で確かにこれはそうだという確信もあった。
ごちゃごちゃと余計なことばかり考えてしまうのも誰かを好きになった副作用なのだろう。
全て初めて経験することなので手探りもいいとこだ。かっこなんてつけている余裕はない。
もう一度、朝日奈が好きなのかと尋ねる彼の表情を思い浮かべる。
優しい顔をしていたと彼は言ったが、まさかそれが自分に向けられたものだとは思いもしていないのだろう。
今までそれなりにアピールしてきたつもりだが、もしかしてあれぐらいでは足りないのだろうか。
だがおそらく彼とよく一緒にいる二人は気付いているだろうから、やはり彼が鈍感なのだ。
先は長い。
ふと彼が最初に問うた言葉が頭をよぎる。
ーーどうしてこんな呼び出し方をしたんですか?
そんなの決まっているだろう?
「牽制だよ馬鹿野郎」
ポツリと呟かれたその言葉は、誰にも届くことなく静かな室内に溶け込んでいった。
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