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「俺らは傍から見て、婚約者に見えなくちゃならねーんだろ」
咲夜さんは、さも当たり前と言う表情で私を見下ろす。
「そ、そうですけど…!」
「それと。言い忘れてたが、今日は俺に対しては敬語じゃなくタメ口で話しかけろ。婚約者なのに敬語は不自然だからな」
「は、はい!」
「ったく。面倒くせぇ。なんで俺がこんなカギの担当に――」
咲夜さんはエレベーターに入りながらブツブツ言っていたが、私は、それに気分を害している余裕すらなかった。
(だって今日は私、七ツ菱ホールディングスの社長令嬢なんだし!ちゃんとした立ち振る舞いができるかなぁ…)
しかも、咲夜さんのことは偽名で呼ばなければならない上に、話すときはタメ口じゃないといけないし。。
だけれど私の試練は、まだ序の口に過ぎなかったのだった――
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