第2話 休日の朝

3/4
前へ
/19ページ
次へ
それはカーテンじゃないのか? と尋ねたくなるようなレース素材の黒いミニスカート。 きっと暫くしたらその下にスパッツでも履くのだろうと思ったが、残念ながらその気配はない。 トップスは薄地のロングパーカー。隠すどころか大きな胸を強調している。 これはどうなんだ。 多恵が動くたびに頼りないミニスカートがめくれ上がりそうで、玉城は気が気ではなかった。 「あっ、いま通った」 ふいに窓の外を見つめて多恵が大きな声を出した。 「え? 何?」 洗顔を済ませ、タオルで顔を拭きながら玉城が多恵の方を見た。 「窓の外を人が通ったのよ」 何気ない調子で多恵が言う。 「へぇ。ここ3階なのに、ずいぶん足の長い人だね」 寝不足で頭の重かった玉城は、子供の冗談につき合ってあげるように適当に反応してやった。 少しカチンときたのか多恵が不満そうに振り向いた。 「冗談だと思ってるんでしょう。本当に見えたのよ。私、たまに見る人なの。霊感あるんだから」 「へえ」 玉城はしばしジッと多恵を見た。多恵は再び頬をふくらます。 「信じてないんでしょ、先輩」 「いや、そんなこと無いよ。そういう力が存在してるっていうことは理解してるよ。最近だけど」 「へえ、そうなんだ。そう言うの信じないタイプだと思ってた。なんだか親近感湧いちゃうなあ」 多恵が嬉しそうに体を寄せてきた。 甘いシャンプーの香りがフワリと揺れる。 玉城は慌てて多恵から体を交わしながら、会話を続けた。 「実は俺もね、ある時期からたまに見えるようになったんだ」 ワザと大きな音を立ててクローゼットを開け、その扉をつい立て代わりにしてパジャマを着替え始めた。 いくら妹同然と言っても、やはり一つ部屋で身支度を整えるのは気まずい。 こういう時、霊感の話題などは色気が無くて、一番適当に思えた。 「わあ、突然霊感が芽生えちゃったんですか? そんなこともあるんだぁ」 「ちょうど取材である人と出会った頃からなんだけどな。そいつがすごく霊感強いんだ」 ほんの少し話を簡略化して話しながら、玉城はバタバタと大急ぎでシャツを脱ぎ、綿パンに足を通した。 「ふうん。霊感の強い人と仕事してたんだね」 「そう」 「なるほどね」 「え? 何がなるほど?」 ベルトを締め、シャツを羽織りながら玉城は訊き返す。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加