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それはカーテンじゃないのか? と尋ねたくなるようなレース素材の黒いミニスカート。
きっと暫くしたらその下にスパッツでも履くのだろうと思ったが、残念ながらその気配はない。
トップスは薄地のロングパーカー。隠すどころか大きな胸を強調している。
これはどうなんだ。
多恵が動くたびに頼りないミニスカートがめくれ上がりそうで、玉城は気が気ではなかった。
「あっ、いま通った」
ふいに窓の外を見つめて多恵が大きな声を出した。
「え? 何?」
洗顔を済ませ、タオルで顔を拭きながら玉城が多恵の方を見た。
「窓の外を人が通ったのよ」
何気ない調子で多恵が言う。
「へぇ。ここ3階なのに、ずいぶん足の長い人だね」
寝不足で頭の重かった玉城は、子供の冗談につき合ってあげるように適当に反応してやった。
少しカチンときたのか多恵が不満そうに振り向いた。
「冗談だと思ってるんでしょう。本当に見えたのよ。私、たまに見る人なの。霊感あるんだから」
「へえ」
玉城はしばしジッと多恵を見た。多恵は再び頬をふくらます。
「信じてないんでしょ、先輩」
「いや、そんなこと無いよ。そういう力が存在してるっていうことは理解してるよ。最近だけど」
「へえ、そうなんだ。そう言うの信じないタイプだと思ってた。なんだか親近感湧いちゃうなあ」
多恵が嬉しそうに体を寄せてきた。
甘いシャンプーの香りがフワリと揺れる。
玉城は慌てて多恵から体を交わしながら、会話を続けた。
「実は俺もね、ある時期からたまに見えるようになったんだ」
ワザと大きな音を立ててクローゼットを開け、その扉をつい立て代わりにしてパジャマを着替え始めた。
いくら妹同然と言っても、やはり一つ部屋で身支度を整えるのは気まずい。
こういう時、霊感の話題などは色気が無くて、一番適当に思えた。
「わあ、突然霊感が芽生えちゃったんですか? そんなこともあるんだぁ」
「ちょうど取材である人と出会った頃からなんだけどな。そいつがすごく霊感強いんだ」
ほんの少し話を簡略化して話しながら、玉城はバタバタと大急ぎでシャツを脱ぎ、綿パンに足を通した。
「ふうん。霊感の強い人と仕事してたんだね」
「そう」
「なるほどね」
「え? 何がなるほど?」
ベルトを締め、シャツを羽織りながら玉城は訊き返す。
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