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「磁石よ、じしゃく。小学生の頃、実験しなかった? 砂鉄とか釘とか使ってさ」
「ああ……。そういえばやったけど」
「強い磁石に釘なんかの金属をくっつけて長時間置くとさ、そのくっついた金属に磁力が移っちゃって、それ自体が磁力を持つようになってしまうっていう、あれよ」
シャツのボタンを止め終えた所で玉城は衝立がわりの扉をパタリと閉めた。
まだ何かを探しているのか、多恵は窓から外を眺めている。
「影響受けちゃったのね。その強い磁力に。かわいそうに、先輩。あんなもの見えなきゃ見えない方が幸せなのにね」
そしてゆっくり振り向いてニコッと笑った。
「仕事が終わったらさ、”その人”には二度と会わない方がいいわね、先輩。きっとこの先、いい影響受けないよ」
なぜだろう。
妹のように思ってる多恵なのに、その一瞬だけ、玉城にはその笑顔が憎らしく思えた。
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