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「今年の桜、見れるかな?」
「見れるよ」
「ホントにそう思う?」
「うん。今、俺の先輩が探してるんだ。君の血縁者がいないかどうか」
「えっ?」
彼女は不思議そうに俺を見た。
「大学の先輩が探偵をやってるんだ。かなり評判らしいから、きっと見付けてくれるよ」
「いつの間にそんなこと……」
「君を……助けたいんだ」
「……」
俺がそっと手を握ると、彼女は少し寂しそうな表情をした。
「ごめんね、こんなことになって」
「君のせいじゃないよ。だから、謝らないで」
「うん……」
それでも、なかなか彼女の表情は晴れない。
「元気になったら、お花見に行こう。今年も目黒川の桜はきっと綺麗だよ」
「うん。そうだね」
そう言って、ようやく彼女は笑顔を見せた。
「見付かったらすぐに知らせる。だから、気を落とさないように」
「うん」
俺はもう一度ギュッと手を握ると、うしろ髪を引かれながらも病室を後にした。
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