第1章

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「今年の桜、見れるかな?」 「見れるよ」 「ホントにそう思う?」 「うん。今、俺の先輩が探してるんだ。君の血縁者がいないかどうか」 「えっ?」  彼女は不思議そうに俺を見た。 「大学の先輩が探偵をやってるんだ。かなり評判らしいから、きっと見付けてくれるよ」 「いつの間にそんなこと……」 「君を……助けたいんだ」 「……」  俺がそっと手を握ると、彼女は少し寂しそうな表情をした。 「ごめんね、こんなことになって」 「君のせいじゃないよ。だから、謝らないで」 「うん……」  それでも、なかなか彼女の表情は晴れない。 「元気になったら、お花見に行こう。今年も目黒川の桜はきっと綺麗だよ」 「うん。そうだね」  そう言って、ようやく彼女は笑顔を見せた。 「見付かったらすぐに知らせる。だから、気を落とさないように」 「うん」  俺はもう一度ギュッと手を握ると、うしろ髪を引かれながらも病室を後にした。
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