第1章

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「ねえ?」 「うん?」 「病気が治ったら……」 「ああ。花見?」 「うん。またあそこのカフェ行こうよ。ケーキ、すごくおいしかったんだよね」 「そうだな。また行ってみよう」 「それから、いっぱい写真撮って……」 「うん」  俺は、楽しげに話す彼女に合わせて何度も頷いた。こんなに明るい表情を見たのは何日ぶりだろうか? 「詳しい事が分かったら、また来るよ」 「うん……」 「それじゃ」  そう言って部屋を出ようとすると、彼女は俺にしがみついてきた。 「っ! どうしたの?」 「また、来てくれる?」 「えっ?」 「ホントに、また来てくれる?」 「……当たり前だろ。必ず来るよ」  俺がそっと背中を撫でると、彼女はようやく安心したように体を離した。 「必ず来てね。ずっと待ってるから……」  そして次の日から、彼女には会えなくなってしまった。
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