第7章

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今日も朝から道場で身体を鍛える。 雄二も刹那も、喧嘩なんてよく売られてるくせに、場合によってはあっけなく負けてしまう。 いつでも俺がついてまわるわけにもいかず、高校の付近で俺が強いなんて知れ渡るのも避けたいから、出来るなら自分たちでどうにかしてほしい。 だからこの夏休み中に少しでも強くなってもらわなければと思う。 雄二は昨日に引き続き一人ひとり相手をしてもらっている。 刹那に関しては雄二と反して少し筋力が落ちているようだ。 俺は午前中はひとりで身体を動かすことにした。 唯も俺と同じことを思ったらしく、少し離れた場所で同じようにひとりで身体を動かし始める。 唯はかなり強い。 見た目に騙されて、手を出そうとしたなら簡単に返り討ちにされる。 刹那には本気で殴ったりしてないからあの程度ですんでいるのだ。 一応、俺の知り合いだからと思ったのだろう。 今日もまたいくつかの視線を感じた。 唯からは不機嫌オーラが漂っている。 動きの中で雄二と視線が重なった。 お前自分の特訓どうなったんだよ。 内心思いながら刹那からの視線があることにも気づいた。 刹那は俺と唯を交互に見ていた。 「雄二、あいつらなんであんな綺麗な動きできんだろ。」 「小さい頃からやってるからじゃねーの?」 自分らがどんな動きしてるかなんてわからない。 ただ、動きながら負荷をかけ、使う筋肉を鍛えているだけなのだ。 隣で動く唯から声がかけられた。 「蝶哉さん。午後手合わせ頼んでもいいですか?」 「いいよ。この中じゃ唯が一番、力を出しきれるから俺にとっていい訓練になるよ。」 そう言うと唯はさっきまでの不機嫌が嘘のように、嬉しそうに笑った。
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