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休憩が終わり、午後の訓練を始めた。
俺と唯は軽く準備運動をして、互いに向き合った。
なぜか他のみんなが観客としている。
道場の管理者の哲が『ちゃんと見ておけ。いい勉強になる。』なんて皆に言っているのが聞こえた。
俺からしたらいい手本になるなんて思えない。
強さとしてはそれなりにあると思っているけれど、他の人たちの勉強になるかはわからない。
「本気でやりますよ。蝶哉さんも手加減なしですからね。」
「わかったよ。」
そういうと俺たちは互いに手を、足を相手に入れていく。
避けて、受け止めて、流して、踏み込む。
スピードは徐々に上がる。
力も少しずつ強くなる。
完全に手加減なんか出来るはずがない。
周りは静かだった。
その中で雄二と刹那の話し声が聞こえてくる。
戦いの最中であっても、周りの音や声を聞き逃してはいけない。
そのため、会話があれば聞き取ってしまう。
「雄二。俺、所々見えないんだけど。お前見える?」
「俺も刹那と同じだな。あいつらすごいな。蝶哉はたぶんまだ力残してるな。」
ご名答。
動きは見えないところあってもそのあたりはわかるんだな。
俺は完全に本気を出すことにした。
全ての感覚を研ぎ澄ませる。
一瞬で決着がついた。
唯が膝をつく。
「参りました。」
「ありがとう。唯。いい動きが出来たよ。」
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