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様子を見る限り、空の話したことが真実のようだ。
そこから何か他の思いがなかったのかとは聞けないまま、その場は空を連れて帰るということになった。
泣き止まない空を龍と廉に任せ、玄関から外に出ようとする前にこのままではいけないと思い、俺は龍、廉、空に言う。
「龍たちのマンションに行くんだよな?先行っててくれないか?」
その言葉で何かを察した廉が「わかりました」と言って2人を連れて行った。
次に雄二に向き直って、
「ここで待っててくれる?ちょっと話してくる。」
仕方ないと思ったのか雄二は少し呆れ顔で「行ってらっしゃい」と送り出してくれる。
空の話の後に空雅の様子がおかしいことに気づいた。
このままでは危険だと思ったからこそ、空雅と話すことが必要だと思ったのだ。
リビングへのドアを開けて再び中に入り、ドアを閉めてソファーで天井を見つめている空雅の所へ行った。
「空雅。お前、俺に何か言いたことあるだろう?」
俺が戻ってきたことが不思議だったのか、俺を見た空雅が呆然としていた。
「お前、大丈夫か?溜め込んでるものあるなら、今ここで吐き出しておけ。何でも聞いてやるから。嫌いになることはないから安心しろ。」
空雅の目から涙が頬を伝って落ちていく。
こいつも辛かったのかと俺は思った。
恋愛を含めるのなら雄二の専用となるが、仕事面からしたら悩みくらい全員分受け止めてやる。
それくらいの覚悟は俺にだってあるのだ。
俺は空雅の側に行き抱き寄せた。
ビクッと身体が震えたけれど、きっとこのほうが話せるのではないかと思えた。
「蝶哉さん・・・俺・・・ずっと前から・・・蝶哉さんのこと・・・好きです。」
「そうか。ごめんな。何も気づいてやれなかった。でも、俺はお前の気持ちに答えることは出来ないよ。」
俺の言葉は伝わったようで、少し落ち着いてきたようだった。
「俺・・・空を、傷つけてしまった。蝶哉さんの・・・代わりに・・・でも、どこかで俺・・・空に惹かれてたんです・・・」
「自分で何をしたのかわかってるなら大丈夫だ。後はお前自身の気持ちに整理をつけたらいい。俺の連絡先は置いていくから、空に伝えたいことがあるのなら会わせてやるよ。お前の俺への思いは薄れてきてるだろう?」
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