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少し遅れて龍と廉が住むマンションに着いた頃には3人はソファで寛いでいた。
空が心に抱えたものはそのままのように思える。
気づく人は少ないのか、それとも空が隠すのが上手いのか。
「ただいま。」
「おかえりなさい。空雅は大丈夫そうですか?」
「大丈夫だよ。」
空のいる前で詳細を話すわけにもいかなかった俺は廉の問いに簡潔に答える。
途中で電話をして悦さんに事情を話し、空雅を落ち着かせるために休暇をあげるように言った。
空には心を許せる相手がいないのだろうか。
「聞きたいことがあるのですが・・・。」
「ん?なに?」
空の言葉に廉が答える。
俺と雄二は少し離れた場所で椅子に座って会話を聞くことにした。
「4人はいったいどんな関係なのですか?」
「うーん。ある仕事の同僚?かな?」
廉はなんともあやふやな答えをした。
高校生が仕事って普通に言っていいものなのか。
空が首を傾げている。
目の前で俺にだけ聞こえる声で雄二が呟いた。
“恋人と上司とその恋人が正解?”
確かに違ってはないけれど、同僚というのも強ち間違いではない。
雄二の答えは今の空に言うわけにはいかないのだ。
まずは空自身、空雅への思いを自覚してもらわないといけない。
先に進めるかはそこからだった。
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