第9章

6/14
前へ
/274ページ
次へ
それでも、まだ元気な不良たちに捕まり、押さえつけられる。 どんな状況になるかは話しておいた空雅だけど、その状況に辛そうな顔をしていた。 「そいつを離せ!そいつはこんなとこで死んでいいやつじゃないんだ!」 不良たちに叫ぶ空は必死だった。 だろうな。 お前は空雅が好きなんだよ。 そして空雅もお前が好きなんだ。 少なからず今回のことに自分が関わっていることもあったから放っておけなかった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「空雅。大丈夫か?今俺が助けてやるから。待ってろ。」 何度頼んでも呼んでもらえなかった名前をやっと呼んでくれた嬉しさに空雅は涙が頬を伝うのを感じた。 〝空。来てくれてありがとう。〟 数日振りに蝶哉さんを見たけれど、俺の中でもう憧れの人へと変わっていたようだった。 恋愛感情を抱いていたことは認める。 そんな時期もあったのだと思えるようになった。 今はそれよりも自分の心を占めているのは空の存在なのだ。 抱き続けたあの日々が忘れられない。 空が欲しくて欲しくてどうしようもなくて。 いつの間にか俺はすっかり空を好きになっていたのだと思った。 境目なんてわからない。 それでもきっかけはあの日蝶哉さんから答えられないとはっきり言ってもらえたことだろう。 空だけを見ていられる。 そう思ったのに、空とは距離が出来たように思えた。 あの日空は逃げるように帰って行ったから、きっと俺を嫌いになってもう顔なんて見たくないんだと思ってたんだ。 それなのに、今この場所に空がいる。 俺のために必死になって、傷だらけになってまで助けようとしてくれて。 ほんとはただの演技なのに、捕まってるふりなのに、罪悪感が溢れてきた。 〝空。もう十分だよ。〟
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

228人が本棚に入れています
本棚に追加