第9章

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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 空雅から電話が来た。 何度も着信があるから、迷ったけれど出ることにしたんだ。 それなのに、聞こえた声は空雅ではなくて。 誰だよこいつ。 『有木空雅を預かった。帰してほしかったら街外れの廃墟に18時に一人で来い。誰にも言うなよ?言ったら有木空雅の命はないと思え。』 それだけ言って電話が切れた。 18時ってあと30分しかない。 すぐに行かないと。 でも、俺が行ったところでなんになる? あいつは俺を代わりに抱くほど久遠が好きで、俺が行ったって何だこいつと思われるだけだと思う。 俺はあいつほど強いわけじゃない。 そのへんの不良にすら勝てるかわからない。 俺は弱いんだ。 そんな俺に何が出来るんだ? あの人たちに頼んだほうがきっと・・・。 でも連絡先知らないや。 久遠たちが仲良さそうだったからあいつらに言えば・・・。 あぁ・・・、誰にも言うなって電話で言われたじゃないか。 どうしようと悩んでいると、頭の中にボロボロで傷だらけになって死に掛けている空雅の姿が浮かんだ。 胸がズキッと痛んだ。 なんで俺・・・。 そう思った時には部屋から飛び出して走り続けていた。 俺は空雅に死んでほしくない。 どこでもいいから生きていてほしいんだ。 また胸がズキッと痛んだ。 だからわかりたくないんだよ。 認めてしまえばもっと辛くなるから。 気づいてはいけない・・・。
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