第9章

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走って、走って、もう息も出来ないくらい苦しくて。 思いっきり走ったからなのか、また別のものなのかわからないくらいに呼吸するのがやっとの状態で、気づけば俺は廃墟を目の前にしていた。 ───来てしまった。 中で声がする。 俺は自分に気合を入れた。 もういいや。 どうにでもなってしまえっ。 思いっきり走って中に駆け込んでいく。 「空雅を返せ。」 俺はそう言っていた。 殴りかかってきたやつらを相手にして、殴られ、蹴られ、それでも立って、踏ん張って殴り返す。 痛いなぁ。 なぜか冷静な俺がいてそんなこと思ってたりして。 俺結局あいつ好きになってんじゃん。 告白する前から失恋決定だし。 結構辛い。 だから気づきたくなかったんだ。 弱いのに助けにきてる俺もバカだけど。 ボロボロになりながら、やっと空雅のいる場所にたどり着いて。 俺は縛り付けられている空雅を見て叫んでいた。 「空雅。大丈夫か?今俺が助けてやるから。待ってろ。」 空雅にしてみたら押さえつけられながらこんなこと叫んでる俺が何言ってんだって思うんだろうけど。 あいつらならもっと上手く助けてたんだろうなって思う。 俺を見る空雅が泣いているんだと気づいた。 なんであいつ泣いてんだ? 胸がキュッと締め付けられた。 俺今、傍に行って抱きしめてあげたいって思ってる。 そんなこと無理なのに。 あいつには好きな人がいて、それは俺じゃ意味ないのに。 俺、何してんだろうな。 でも、助けに来たんだからこいつら倒して開放してあげないと。 俺は気合で立ち上がり、最後の力を振り絞って押さえつけてたやつらを殴り倒して、やっと空雅の所にたどり着いた。
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