第9章

12/14
前へ
/274ページ
次へ
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 空が泣いている。 やっぱり俺のせいなのかな。 でもせっかくあの人がくれたきっかけを無駄にするわけにいかない。 空の頬にそっと手を当てて覗き込んだ。 「空。来てくれてありがとね。こんなに怪我させちゃってごめん。本当は俺が守らなきゃならないのに。」 次の空の言葉に俺は耳を疑った。 「空雅。もう一度、俺を抱いて。これで最後にするから。誰を思っててもいい。代わりでいいから。」 空? 何を言ってるの? もしかして、あの時の俺の思いに気づいた? 気づかれないようにしてたはずなのに。 なぜ空は気づいた? 「空?俺が誰かの代わりに空を抱いてたって思ったの?どうして?」 確かに最初は完全に空を蝶哉さんの代わりに抱いてた。 「だって、空雅は久遠が好きなんだろ?伝えたのか?俺、久遠の代わりだったんだろ?そんな簡単に気持ち変わらないのもわかってるから。ただ、俺がもう一度お前に抱かれたいって思っただけだから。」 全部説明しなきゃならない。 空はわかってる。 「ごめんな。空。最初は空の言うとおり蝶哉さんの代わりだったよ。俺ずっとあの人に憧れてたから。それでも立場が違いすぎてまともに話すこともできなくて、だからそれが恋愛感情に変わった時も言えないままだった。でもね、空を抱いてて、一緒にいる間に少しずつ空を可愛いと思ってきていて。後半なんて蝶哉さんのこと吹っ切れないまま、空を好きになってた。空が帰った後、ちゃんと話したよ。あの人はわかってた。もう俺が蝶哉さんを好きな気持ちは過去のものだって。ただ完全に終わらせられないままだって。だから終わらせてくれたんだ。本当、すごい人だと思ったよ。」 「・・・。」 ちゃんと言わないと伝わらないね。 「空。俺は空が好きだよ。だからね、もう一度とか。最後とかっていうのは無理かな。今、空を抱いてしまったら止まらなくなりそうだから。無理はさせたくないんだ。」 更に増えた涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、空は何か言いたそうにしていた。 「まずは泣き止もうか。それから何か言いたいことあるなら聞くから。」 「・・・うん。」
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

228人が本棚に入れています
本棚に追加