第10章

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2学期のテスト期間が迫ってきていることを思い出す。 今回も雄二のテスト勉強に付き合わなければと内心思った。 周りはテストの後に待っている文化祭に浮かれていて、もうそんな時期かと思う。 この地に来て、この学校に通い始めて、もう5ヶ月になるのか。 いろいろとあったなと思う。 学校から帰ろうと靴を履こうとしていたとき、上級生らしき人に呼び止められた。 見た目は真面目そうだけど、何か格闘技をしていそうではある。 強いかといえばそうでもなくて、実践向きではないけれど。 普通の高校生でいうなら強いほうだといえるだろう。 「久遠君だよね。今時間あるかな?話あるんだけどいい?」 「はい。少しなら。」 俺の素性を知らない場所で年上に対しては礼儀と敬語は普通に使う。 上級生についていくと生徒会室と書かれた部屋の前で止まった。 いったい何を言われるのだろうか。 嫌な予感はするものの、とりあえず話だけは聞いておこうと思った。 「入って。」 ドアを開けた上級生に言われたまま中へと入る。 中にあるソファーへと座るように言われ、従って座ることにした。 向かい側に座った上級生が自己紹介を始める。 「俺は生徒会副会長の香坂 和輝。2年だ。よろしくな。」 「はい。ご存知かと思いますが、俺は久遠 蝶哉。1年です。」 知ってるよと香坂はニッコリと笑った。 ここに連れて来た目的はこの状況からすると、生徒会に入ることだろうけれど、前置きが何かありそうだ。 「君は、同性の恋愛をどう思う?」 「本人の自由ですのでかまわないと思いますが。」 普通に答えた香坂はなるほどと頷く。 質問がいくつか来るものの、なんとなくの流れはわかりつつあるけれど、きっとこの流れは乗っていくほうがいいと思う。 俺は気づかないふりをすることに決めた。
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