第10章

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俺は次に刹那からくる質問を待った。 まだ続くだろうと思う。 「蝶哉。結局俺はどうしたらいい?蝶哉から見て唯君は俺をどう思ってるように見える?」 「態度で嫌な素振りを見せていても、心の中では嫌ってるわけではないだろう。きっとキスそのものが初めてなら、動揺したんだろうな。避けることで自分の心が動くのを止めているように思う。だから、唯を手に入れたいなら簡単だ。自分に惚れさせたらいい。そして、それを自覚させるのが一番だろう。」 唯の心は動いているかもしれない。 ただ、今離れている間に他の人のアタックに負けていなければだが・・・。 「そういえば、蝶哉は唯君と同じようなものって言ってたけど、なんで?」 「それお前に言わなくてもいいことだろ。」 なぜか雄二が返事をしている。 ここまで話しているのだから言っても問題なさそうな気がする。 「てか、雄二。蝶哉抱きしめちゃって。誰も取らないだろ。というか誰も手を出せないだろ?何かしようものなら返り討ちされんじゃね?」 確かに雄二以外にこんなことさせる気はない。 何かしてこようとすれば反射的に防御態勢になる。 「さっきの答えだけど、唯が俺と同じようなものと言ったのは、過去に俺は誰一人として恋愛感情を抱かなかったということだよ。簡単に言ってしまえば雄二が初恋の相手だね。」 「まじで?でも蝶哉は見ていてもわからないよな。雄二はわかりやすいけど。」 「ほっとけよ」 そう言って雄二は俺を抱きしめたまま背中に顔を埋めた。 この様子だと俺の言ったことに照れているんだろう。 そして刹那にからかわれた。 「両思いだから付き合うことにしたってこと?」 「俺の場合はちょっと違うね。」 「え?違うの?」 雄二は俺の後ろで顔を隠したまま動かない。 黙って聞くだけか。
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