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15分ほど車を走らせると、よく知る老舗料亭に着いた。
駐車場に車を停めると近くに見慣れた車があった。
親父はすでに来ているらしい。
龍の車も到着し、助手席から染谷の姿が現れた。
どうやら彼は龍に連れてこられたようだ。
店の入り口でメニュー表を見た牧野に腕を引っ張られ小声で言われた。
“俺あまり金ないんだけど。”
それが聞こえたらしい川霧も頷いている。
「気にしなくていいよ。お金出すのはうちの父親だから。」
「久遠の家って金持ち?」
「さぁ。普通じゃないかな?ほら、行くよ。」
店員に案内されて先を歩いている廉と龍との距離が少し開いている。
染谷も少し戸惑っている様子はあるけれど、龍の少し後ろをついていっていた。
此方ですと部屋の前に止まった店員に障子を開けられる。
奥からよく響く太い声がした。
「来たか。」
「蝶兄おかえり~。」
廉も龍も一番奥に座る人物へ頭を下げた。
「「ただいま戻りました。」」
「こっちに来て座れ。蝶哉、お前はここだ。」
俺に自分の隣の空席を指定してきた。
近くに行き挨拶を先にする。
「ただいま。父さん。」
「おかえり。また明日向こう行くんだろ?ゆっくりしてけ。」
ニッコリ俺に向かって話す姿は普通の父親の顔だ。
牧野も川霧も染谷も、この光景に少し安堵した顔をしていた。
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