第3章

13/13
前へ
/274ページ
次へ
次の日、朝食の時間に顔を出した母を見た3人が、母から目をしばらく逸らせずにいる光景は、不思議としか言いようがない。 母が部屋を出て、その方向から咄嗟に目を逸らした彼らが、何かを呟いていたけれど聞き取れなかった。 帰りの車の中で牧野から言われたことで、朝食の時の3人の動作の理由がわかった気がする。 「久遠のお母さんて美人だな。」 川霧が隣でウンウン頷いている。 確かに自分の母親ながらに美人なほうだとは思うけれど。 そこまで目をキラキラさせて言うほどのことだろうか。 「そう?」 「久遠は絶対母親似だね。」 それはよく言われてきたため否定はしない。 兄も顔つきは母親似だと思う。 けれど俺と違って兄の見た目は、がっちりとした体系だ。 俺とは筋肉のつき方が違うらしい。 運転席から話が変わるけどと廉が言ってきた。 「龍も一緒に来るそうですよ。俺のところに転がり込む気らしいです。」 「へぇ。」 「染谷を降ろしたら行くから。と言われましたよ。しっかりと荷物はまとめたようです。」 やれやれとため息をつく廉。 けれどその横顔はどこか嬉しそうでもあった。
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

226人が本棚に入れています
本棚に追加