第6章

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お昼を食べた後の組み手に俺も参加した。 全員と手合わせした後に雄二と今向かい合っている。 雄二はさっきまでみんなに相手をしてもらって汗だくになっていた。 「蝶哉、なんでそんな涼しげなの。俺汗びっしょりなんだけど。息切れさせたい・・・いや・・・でも・・・あの顔は。うーん。」 途中から声が小さくなった。 ぶつぶつ何か言っているけどさすがに聞こえなかった。 「雄二。何ひとりでぶつぶつ言ってんの。はじめるよ?」 そう言って俺は雄二へと踏み込む。 「ちょっ。いきなり!?」 手加減はしてるものの、元がいいからなのか受け止められた。 朝より上達している。 これを休み中ずっとやったらかなりいい線いきそうだ。 俺は少しずつ強めていく。 加減を誤らないように。 大切な人を傷つけることのないように。 けれど、特訓だから、少しは本気でやることにする。 いきなりスピードを上げていくと、雄二の動きが鈍ってくる。 「はやっ。どうしたらそんなに動けるんだよ。うぐっ。」 鳩尾に一発入れてやった。 それほど強くはないから少ししたら動けるようになるはずだ。 「雄二の負けだね。お疲れ。」 その場で倒れこみながら、涙目で見上げてきた。 汗で濡れた髪、捲り上げた袖、何をみても格好よく思えてしまう。 これは言ってやんない。 俺も少しは思いっきり動くかなぁと思った。
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