第9章

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男は渋々俺に電話を渡してきた。 「空雅か?休暇中に悪いな。ちょっと出て来れないか?急用だ。」 俺の言い方に男たちが呆然としている。 電話を戻すとどこにいけばいいか聞かれたようで男は、俺たちを連れていこうとした場所をはなしているらしい。 絡まれた場所から少し離れた廃墟で、俺たちと不良グループ十数名は空雅の到着を待っていた。 「お前、有木さんと知り合いだったのか。俺が頼んだときは断られたのに、お前と話した後に態度が変わった。」 「まあね。空雅が来てからお前らにちょっと手伝ってもらおうと思ってね。」 普段している眼鏡を外して俺は男に言う。 空雅と知り合いだとわかってから彼らの態度が一変した。 あの上級生たちには口止めしないといけないな。 それよりこの地は不良いすぎじゃねーの? 「蝶哉。いったい何する気?」 黙ってついて来ていた雄二がやっと口を開いた。 「ちょっとした荒療治?これでダメなら他に考えるしかないかな。こいつらが上手く芝居できるといいが。」 「芝居?」 よくわからないという顔で雄二が首を傾げている。 そこに空雅が到着した。 不良たちが近づいて行き、空雅に向かって頭を下げて挨拶をしている。 親分子分が思い浮かんで苦笑した。 この辺の躾はなっているのか。 空雅がこっちへ向かってきた。 「蝶哉さん。先日はお世話になりました。急用と言ってましたが俺は何をしましょう?」 「空雅。お前は今から捕らわれのお姫様をやってもらおう。さて、そっちの不良たち空雅を縛ってくれる?」 けれど自分より立場が上の空雅を、不良たちが縛れるわけもなく、結局俺がやることになった。 されるがままの空雅を見て、不良たちはただ立ち尽くすし、呆然とみている。 廃墟の奥で椅子に座らせて、ロープで手足を縛り、椅子に固定した。 「全部終わるまでこの状態でいて。成功するといいんだけどな。」 「蝶哉さん。いったい何をしようとしてるんですか?」 「ん~。全てが終わったら教えてあげるよ。言いたいこととか聞きたいことはもうない?終わるまで口も塞ぐよ。」 諦めた空雅は頷いた。
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