愛を待っている

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「煮詰まってるねぇ、お若いの」 よっこらせと口癖みたいに(と言うか、自分が言ってるのも自覚してないんだろうな)呟きながら、山中のじいさんが、俺の隣に腰を下ろした。 くゆらせていた煙草を空き缶の中に落として消す。じじっと短い音がして、かすかに焦げたにおいが上ってきた。 夢見荘の階段の裏側の狭いスペースは、ここ数年の俺の喫煙所兼息抜き空間だ。 宗太至上主義とかしている宗佑のおかげで、俺は自分の家のはずの202号室でさえ、煙草を吸えなくなった。 「そう言うじーさんこそ、どうなのよ」 ふぉっふぉっふぉと昔話に出てくるじいさんそのままの笑い方で、じいさんが肩を揺らす。 「ノブさんは溜め込むからねぇ」 「なに、そういう風に見えるの、俺は」 ははっと乾いた笑いを漏らして、本日の最後の一杯と発泡酒を呑みきった。あぁだめだ。いまいち今日は酔いきれていない。 「今日はどうしたんだい、どっちの宗ちゃんが原因かね、大きい方の宗ちゃんかな」 「どうなんだろうねぇ」 「なに、じじいは耳が遠いんだ。言いたかったら地蔵だと思って、呟いてくれたらいいさ」 同じ夢見荘に住んでる人間は、みんな身内みたいなもんなのさと、おおらかにじいさんが息を吐き出した。11月も半ばで夜更けとなると、吐く息は白い。
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