愛を待っている

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俺と宗佑と隼人くんは、同じ施設で育った。親は居なかった。 施設の環境はそこまで悪かったわけではない、職員の人もそれなりには優しかった。でも俺はやっぱり宗佑と隼人くんがうらやましかった。同じ血の繋がりがある二人が、ずっと。 ずっとずっと、宗佑の隣には隼人くんがいた。 隼人くんが中学を卒業して、俺たちより3年早く施設を出るそのときまで。宗佑を頼むな、こいつ甘えん坊だから。 そう言って寂しそうに笑った隼人くんの顔が俺は忘れられない。 だから、と言うわけじゃないけど。俺はもうずっと、宗佑を見てきていた。 隼人くんの代わりを気取るつもりはない。できれば隼人くんを越えたかったんだけど。 でもそれを俺が越えられないのは仕方がないところはあるかもしれない、そう思えるけれど。宗太にとられるのは、ちょっと悔しい。 そうならないよう俺は俺で、したいようにするだけだ。 でもなんでなんだろう、俺の頭はいつだって、宗佑が幸せであってくれればそれでいいと、どこか思ってしまっている節がある。 敗因があるとしたら、たぶん、これだ。 恋を凌駕して、愛に近い。それも、無償の、だとかそんなこっぱずかしい形容が付く感じの。 「ただいまー、そーすけ。タカノブ捕まえてきたよ」 「お帰り、宗太。孝信も、ご飯にするよ」 きしむドアを開けた宗太の頭越しに見えた室内は、おいしそうなにおいと暖かな空気に包まれていて、柄にもなく胸が締まった。 「ただいま、宗佑。心配してくれたの?」 「おまえは俺に言わないけどな」 「いえることは、ちゃんというよ」 信用してないわけじゃないんだからと、言外に匂わして靴を脱ぐ。 その先で、宗佑が穏やかに小さく笑った。 【END】
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