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まず、手鍋に水を100㏄。
宗佑に渡されたメモを見ながらふんふんと軽くうなずく。
俺の家と同じ間取りの狭い台所のはずなのに、なぜか広く見える。
きちんと整頓されているからなんだろうってのはわかる。
もはや俺には使い道が分からないような器具が狭い壁にぶら下がっていて、あぁちゃんと工夫してんだなぁさすがプロとは思う。それもわかる。だがしかし、肝心の計量カップはどこにあるんだ。
「………まぁいいだろ」
なんとかなるなる。握りこんだ手鍋を蛇口の前に差し出して、バルブを回す。
途端。
「ちょ、タカノブなにやってんの!?」と子どもの高い声が聞こえてきた。
おまけにばたばたとこっちに向かって走ってくる気配までしている。
「……宗太、おまえなぁ」
「信じらんない、タカノブのくせになにやってんの!? そーすけならともかくタカノブ料理下手なんだからちゃんと測ってよ」
興奮して一気にまくしたてた宗太は、言い終わった瞬間にげほげほとせき込みだした。
かぜっぴきで、俺の腰くらいまでしか身長もないチビのくせに、口調だけは偉そうだ。いつものことだけど。
「あー、もうちゃんと作ってやるから、いい子に寝てろ」
ここで宗太の体調が悪化してみろ。帰ってきた宗佑に俺がどやされる。
くしゃりと宗太の頭をなでてやると、ばつが悪くなったのか触られたのが気にくわなかったのか、宗太がせっせと自分で前髪を整えなおしている。
どうせ寝るんだから一緒だろうと思うが、それはそれと言うやつなのかもしれない。
「ちゃんと、作ってよ。そーすけがせっかくメモに書いてってくれたんだから、おいしいの作ってね」
「あー、わかったわかった」
……とりあえず、計量カップ捜索すっか。
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