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家から出て、職場に向かう。
木々がやや冷たい風に吹かれて揺れている。
寒いなら上着を着たらいいのに。そんなことまで思う季節だ。
ある程度歩くと彼女と出会った喫茶店がある。
ここのマスターは強面だが、僕達が結婚すると告げると綺麗なマグカップを手渡し泣いて祝福してくれた。
ただのバイトが結婚するだけで泣くのかと驚いたが彼女の持つ力がそうさせたのだろうと思うことにした。
少し歩いては木を眺める。
永遠に近い期間をこの場所で動くことなく過ごす彼らに少し憧れた。永遠というものはないのだ。
彼女といつ別れが来るか分からない。
そう思うと少し身震いした。
恐怖という強大な壁が立ち塞がり僕の行く手を阻む。
そんなことをしてると講義までに時間がなくなってきてる事に気づいた。
少し足早に職場経向かう。
彼女が出かけ際に言っていたことを思い出す。
「あなたは早めに家を出ないと大学に着くのが昼頃になっちゃうわ」
それも正しいかった。1人でうなづいて歩く。
正論中の正論だ。
「いってきます」
なんとなく目の前の木に言った。
返事はなかった。
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