1人が本棚に入れています
本棚に追加
「た、助かった」
息も切れ切れな男は、礼を言うと同時に、その場にへなへなと座り込んでしまった。
よく逃げ切れたものだ。
随分と追いかけ回されたのだろう。
額には、汗で髪の毛がぴったりと貼り付いていて、着衣は激しく乱れている。
それでも、ある程度運動の出来る人間なのか。
数分も座っていると、呼吸も落ち着いたようで、もう立ち上がれるまで回復したようだ。
あとは水でもあれば完璧かもしれないが、そうそう都合よく物事は運ばない。
それに、不要だろう。
「いや、ほんと助かった。それじゃ」
片手をヒラヒラと振って立ち去ろうとする男。
しかし、その手を僕は掴み、強引に引き留めた。
不振そうな顔をする男。
まぁ、当然の反応か。
見ず知らずの人間に引き留められる事など早々ない。
「なんだ!何かようか!」
態度を一変させる男。
ふむ、表と裏の顔を持ち、カッとなりやすい。
聞いていた通り。
最初のコメントを投稿しよう!