手遅れになるまで

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わざとらしく咳払いをひとつする。 なんでもない風を装ったつもりが逆効果だったらしく、夏樹が少し身を震わせたのがわかった。二人の間を流れる空気に、うっすらとした背徳感のようなものが漂う。 「…失礼しますよ」 冗談っぽく、普段どおりの声に聞こえるように祈りながら、そう言って夏樹の下腹部に触れる。 ごわごわとした茂みの奥に、ぬるりとした感触を感じた。ゆびさきが、熱いものにふれる。 夏樹のそれは、もう硬くなっていた。あれだけドキドキしていれば、無理もない。 付け根をなぞるように、人差し指を這わせる。 「う、ぅ…にーちゃん、なに、これ…。なんだよ…っ、クソ恥ずかしいんだけど……うぅぅ…」 「俺だって恥ずかしいわ!」 とりあえず、手のひらを筒状にして、てさぐりのままで包んでやる。 …ところで、昔は一緒に風呂に入ったりもしたから、知ってはいたが。 「おまえの、大きいなあ」 「う、ぅ、るさい、そんなの今いいっ……」 少し触れただけで、夏樹はもういっぱいいっぱいだ。早い呼吸を繰り返して、なんとか平常心を保とうとしているように見える。
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