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「ち、ちょっと待って!」
やっと声が出た。
「え?動かなくなったって何?えっ!?殺しちゃったってこ・・・」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよぉ」
恵美子ちゃんは、困惑気味に声を出す僕の言葉を遮った。
「とりあえず、後は私が全部やっておくので、ケースケさんはお姉ちゃんの荷物をお願いしますぅ」
僕はまったく考えがまとまらないまま、「ん、うん・・・」と首を縦にふった。
「でも良かったぁ。昨日、ケースケさん、「紗栄子がいなかったらなぁ、紗栄子がいなかったらなぁ」って何度も言ってたじゃないですかぁ」
いや・・・
確かに何度か言った気がするけど・・・、だからって・・・
「これで望みが叶っちゃいましたねっ!」
恵美子ちゃんは、パァっと明るい笑顔でそう言った。
・・・これは、僕が望んだことだったのか?
目の前の全部が白黒に見えた。
「と言うわけで、これから私も忙しくなっちゃうかと思うんですよぉ~。なのでしばらくは会えなくなっちゃいますけど・・・」
「い、いや・・・、ち、ちょっと待って!」
このまま恵美子ちゃんにしゃべらせておくことがとても怖いことに思えた。
「あ、あの、なんか・・・、なんかごめん・・・」
「・・・ん?何が?」
「・・・あの、さ・・・、恵美子ちゃんとはまだ今日で会ったのも3回目で・・・」
うまく言葉がつながらない。
「だから・・・、ほとんど会ってもないからよくわからないし、でも、そんな会ってもないのにあんなことしちゃって・・・」
言葉がうまくつながらない。
「だから、あの・・・、ごめんって言うか・・・・もっと会ってみてから・・・からじゃないとって言うか・・・」
僕はもう恵美子ちゃんの目を見ることができなかった。
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