僕が音楽をつづける理由

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迷子センター 今すぐこっから飛び降りてもいいと思った。 しかし、そんなことできるわけがない。何もない顔をして、山中晃希(やまなかこうき)は電車に乗った。現在俺はアルバイトをしているが、同級生はみな就職、もしくは進学しており惨めに感じていた。しかもつい最近まで自分はニートだったのだ。 家に帰ってポストの中を覗いてみると、ショッピングセンターの商品券があった。親宛のものだろうと思ったが、なぜか自分宛だった。俺は両親と暮らしている。 趣味でギターをやっておりこれで新しい弦でも買おうと思った。晃希は以前バンドをやっていたが、下手くそだの面倒くさいやつだと言われて半年以上前にクビになった。それでもギターは毎日弾いてるし、聞く人もいないのに曲は作っていた。 日曜日にショッピングセンターに行って、楽器屋にその券を見せるとなんと使えないと言われた。言い返そうと思ったがすぐ諦めた。遅めの昼飯でも食べて帰ろうと思った。 いつからだろう、なにもかもどうでもよくなって無気力に生きるようになってしまったのは。友人にお前は何をやっても駄目だとか、お前どこも長所がないのになんのために生まれたのとか罵倒されれば自己肯定感が下がるのも当然だ。それ以前にスクールカーストの最底辺に自分はいた。 だからあんなの友人じゃない。友人なんか一人もいなかった。 そんなことを考えているとどこからかアナウンスがかかってきた。 「本日も○○店にお越しいただきまして誠にありがとうございます。ご来店中のお客様に迷子のお知らせをいたします。深い絶望の中お越しの山中晃希さん捨てきれなかった夢がお呼びです。先程楽器店いらっしゃった山中晃希さん1階迷子センターへお越しくださいませ」 同姓同名か?いや違う、間違いなく自分だ。楽器店に同姓同名でしかも迷子の子供なんかいないはずだ。なぜ呼ばれたのか謎だ。それにすごくおかしいアナウンスだった。 その謎に満ちた迷子センターに行くとそこには一人の女性がいた。
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