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部屋に戻れば丁度夕飯の支度が終わる頃だった。
ごゆっくりどうぞ、と仲居さんに言われ会釈を返してその姿を見送れば、「ちょっとちょっと」と聖護が手招きをする。
「何なん?」
「いいから、来て」
何を偉そうにとぶつぶつ呟きつつ足を運び、聖護の視線の先を覗いて思わず「げっ」と声が出た。
二つ並んだ布団。
その明からさまな様子に俺と聖護の反応は両極だった。
隣で見上げた聖護の顔は鼻息荒く、今にもおっ始めてもおかしくない。
「さ、先に飯食うでっ」
聖護の腕を掴み、まずはこっちが先だと引っ張ればニヤつきながらついてくる。
「その顔、やめろ」
「じゃあ、後でならいい?」
それが俺の言ったことの言葉尻を取られたのだと理解するには、数秒の時間を要した。
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