おやすみ、世界

33/66
前へ
/66ページ
次へ
少し表面が乾きかけた刺身を一切れ、聖護の口に入れてやると、それをぱくりと口に含んで嬉しそうにもぐもぐと咀嚼する。 「ほら、あとは自分で食べ」 強引に皿を突き出せば、ふふっと笑った聖護は「ありがと」とそれを受け取った。 「菫梨くんも何かいる?」 「いらんからお前にやったんやろ」 「俺も菫梨くんに『あーん』したい」 「いらん」 そうやって少し強めに返せば、むーっと唇を尖らせた聖護はぶつぶつど何やら呟きながら、結局は皿の上の刺身をペロッと平らげた。 「お前、そのうち太るぞ」 「大丈夫。あとで運動するから……はい、ごちそうさまでした」 「あ、あぁ……ごちそうさまでした」 俺の忠告を適当に流し、ぱちんと手を合わせた聖護につられるように自分も手を合わせた。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加