82人が本棚に入れています
本棚に追加
少し表面が乾きかけた刺身を一切れ、聖護の口に入れてやると、それをぱくりと口に含んで嬉しそうにもぐもぐと咀嚼する。
「ほら、あとは自分で食べ」
強引に皿を突き出せば、ふふっと笑った聖護は「ありがと」とそれを受け取った。
「菫梨くんも何かいる?」
「いらんからお前にやったんやろ」
「俺も菫梨くんに『あーん』したい」
「いらん」
そうやって少し強めに返せば、むーっと唇を尖らせた聖護はぶつぶつど何やら呟きながら、結局は皿の上の刺身をペロッと平らげた。
「お前、そのうち太るぞ」
「大丈夫。あとで運動するから……はい、ごちそうさまでした」
「あ、あぁ……ごちそうさまでした」
俺の忠告を適当に流し、ぱちんと手を合わせた聖護につられるように自分も手を合わせた。
最初のコメントを投稿しよう!