82人が本棚に入れています
本棚に追加
「まだ、しーひんから。
ちょっとだけ菫梨くんに触らして?」
「ま、だって……」
久しぶりに聞くストレートな表現に加え、いつもの柔さの中に僅かに色を濃くしたような聖護の目に射抜かれて顔が熱くなる。
「菫梨くん……」
さらに声にまで色香を含んで名前を呼んでくる。
こいつはいつの間にこんな風に育ったのだろうか。
「絶対やな?」
「うん。絶対に菫梨くんの嫌がることはしーひん」
その言葉に心臓が痛くなる。
「菫梨くん?」
思わず強ばってしまった身体に気づかれてしまったのだろうか。
聖護の声が俺を気遣った。
その時、俺の中にあった本音を告げることはできず、いつも聖護の気持ちを雑に扱ってしまっている自覚はあって。
それをいつも笑って許してくれていることもちゃんとわかっている。
最初のコメントを投稿しよう!