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それを口で、言葉で伝えられたら一番いいのは明白なのだけれど、それができない自分にできることはと言えば。
立ち上がり、のそのそと歩き出した俺を聖護の両手が迎えてくれる。
「おいで」
ふふっ、と笑いを付け加えた聖護の両手の間で身体を反転させると、伸ばされた両手に腰をふわりと包まれ、ゆっくりと引き寄せられる。
恥ずかしさを押し隠し、聖護の脚の間に腰を下ろせば、背中にぴったりとくっついた聖護に抱きしめられた。
「はーっ。やっとや」
感極まったような吐息混じりのその声は耳のすぐそばで聞こえ、全身に流れ込んでくる。
「何が……やっと?」
どうにか口にできたのはたったそれだけだったけれど、聖護はちゃんと答えてくれる。
「何か最近ずっと菫梨くんが遠かったから。
一緒にいたし、キスとかはしてたけど全然足りひんし。
こうやってくっつきたかったん」
そしてまたぎゅっと力を込める聖護の腕に心臓がすごい音をたてた。
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