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仄かに色めきだった空気の中、聖護は俺の肩に顔を埋めたまま約束を守るかのように、それ以上は何もしない。
ただ聖護の息づかいと、心臓の音が止めどなく伝わってくるせいで落ち着かない。
ざわざわと騒ぎ出す身体。
そのざわめきをかき消すためにすがったのは聖護の指だった。
お腹の前で組まれた指をきゅっと握ると一定だった聖護の呼吸は僅かに乱れたけれど、それ以上は何も変わらない。
ただ手持ち無沙汰を解消させるように意味もなく聖護の指を弄り遊んだ。
小さい頃はいつも繋いでいた手。
あの頃はそれが自然だったのに、今はこうして触れることに意味ができた。
今までちゃんと見たことが無かった聖護の手。
指の長さとか太さとか、きっと俺よりも大きいんだろうな。
組まれた指を解き、自分の手の平に乗せるように促すと聖護は何も言わずに手を合わせてくれた。
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