82人が本棚に入れています
本棚に追加
「しょ……それ、やぁ」
「んー?ほんまに?」
「ほ、んまっ……あっ」
嫌だと言っているのにシャツと一緒につまみ上げられ、目尻に溜まったものが溢れ落ちた。
俺の嫌がることはしないと言ったのに。
どうしたって制御できなくなった自分の身体を持て余して涙が止まらなくなる。
「うぅ……」
「菫梨くん?えっ!?泣いてるんっ!?」
「ごめんっごめんっ」と聖護の焦る声と抱きしめられる腕の力強さは熱を孕んでいた空気を一瞬にして冷ました。
「そんな嫌やった?」
そんな聖護の不安げな声に上手くは答えられない。
本当は「嫌」ではないのだ。
ただ自分が自分でなくなるような感覚に未だに慣れないだけで。
最初のコメントを投稿しよう!