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「絶対こっち見んなよ」
「わかってるけど……それ、今さら隠すとこ?」
「うっさいなっ。絶対見んなっ」
「はーい」
先に湯船に浸からせた聖護に何度も何度も喧しく言い聞かせ、背中を向けさした。
腰にタオルを巻いた俺は、聖護が言いつけを守っているかを確認しながら洗い場へと歩く。
渋々ながら返事をする聖護は時間をもて余すように両手で湯を掬っては流して遊んでいた。
「なぁ菫梨くん」
「何や」
「背中洗っ……」
「いらんっ」
洗うだけで済まないことなど考えるまでもないと、頭の泡を目一杯泡立てながら一蹴した。
まるでさっきまでの淫靡な雰囲気は一切消えたような気がするけれど、俺は頭を洗いながら身体の中に残る熱にくらくらしたままだった。
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